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家守りと万葉集と味噌汁

先日、大変お世話になっていたお施主さんの葬儀に参列致しました。

大工さんに限らず、他の職人さんたちも、それぞれ思い出を沢山頂いたお施主さんでした。

研究なさっていた万葉集の手書きの資料。
A3のコピー用紙の分厚い束を開くと、鉛筆で一句一句綺麗に分類された作者と訳。
とにかく、ずっと眺めていたいような、素晴らしいものを拝見させていただいた日のこと。

キッチンのリフォームの為に、お施主さんと娘さんと、雑談をしながら食器戸棚から沢山の食器を、
ひとつひとつ新聞紙に大切にくるんで、ダンボールに詰めた日のこと。

和室のリフォームの最中、昼食の時間に、大工さんに味噌汁を作っていただきました。
新しいキッチンで、動線もスムーズにテキパキと楽しそうに味噌汁を作るお施主さんを、
そのキッチンの前のダイニングテーブルから、お茶をいただきながら眺めていた至福の時間。
そして、お裾分けの味噌汁のなんと美味しかった日のこと。

その家の細部にわたり、思い出が詰まっています。
携わった家と、そこに住まうご家族のその先、そのまた先を見守っていく責務。

家守りという仕事とは、そういう事なのではないかと思うのです。


(2014.03.10)